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下手の横好き語学学習日記


by telescopio

プロトコルをじっくり見てみる(バンクーバー五輪)。

まだフィギュアひっぱってます。
女子フリーのプロトコル(採点の詳細)を見てみましょう。
私も詳しくないので、きちんと理解したい方は、専門のサイトでどうぞ。

ではまず、こちらが今回の女子シングルフリーのプロトコル
開いた途端に「うえっ、なんじゃこりゃ」と思った方は、深入りしない方がいいですよ(笑)。
この先の話は、あまり興味のない人には、かなりうっとうしいと思います。
私が忘れないように書いておくだけなので、無視してください。
こんなもの判らなくたってフィギュア観戦は楽しめるし、判ったから面白くなるってもんでもありません。
より深く理解しようといろいろ調べると、ドス黒い話(ほとんどマユヅバ)に次々いきあたり、何かうんざりしてきますしね(話としては面白いけれども)。
むしろフィギュアそのものはそれほど好きでもないけど、あの採点てどうなってるの?という人が知ると面白いかも。



...覚悟はいいですか(笑)。

さっきのリンク先と見比べながら読んでください。
上位の選手から順に詳細な点数が出ているので、当然、1位のキム・ヨナ選手から(今更だけど、英語標記では発音のしやすさを考えてYu-naにしてるけど、韓国語の発音ではヨナが正しいそうだ)。
1から12までの番号を振られているのが、実際に行った要素の略号。

最初の「3Lz+3T」というのは、トリプル・ルッツ+トリプル・トウループのコンビネーション、という意味。これの基礎点がBase Value の欄にある10.0。その横にずらっと並んでいるのが、各ジャッジので”きばえ評価”。
ジャッジは9人いるから、点も9個並んでるけど、このうち最高の3と最低の0を切り、あとランダム・カットの二人を除いて平均を出す。といっても、残りは全部2点だから、誰を除こうとGOEは2.0。これを基礎点にたした12点が、キム選手の最初のコンビネーションについた得点。

次の「3F」は、トリプル・フリップ。基礎点5.5に、1~2の評価がついている。最低の1と最高の2を一人分ずつ切り、他にランダム・カットで二人除かれるが、1をつけたジャッジが二人で残りはみんな2のところ、平均が1.80になっているということは、二人の1点のうち、どちらかはランダム・カットの対象ではないということが判る。
ここで、こうやって平均点と上下カットの関係から、誰がランダム・カットされたジャッジか、割り出そうと思えば多分できると思う。私はそれはどうでもいいのでやらないけど、そういうパズルが好きな人は面白いかも。

少し下がって、7番、8番、10番の要素は、基礎点の横にXがついている。これは、後半のジャンプなので基礎点が1.1倍になってますよ、という意味。トリプル・ルッツは基礎点6.0だけど、確かに6.6となっている。つまり、1.1倍された後の点が表示されている。

11番目の要素「FSSp」はフライング・シットスピン。
ここであれっと思う(かも)のは、ジャッジの点が1~2なのにGOEが0.6になっていること。
これは、スピンのGOEは、換算票により、-1.0、-0.6、-0.3、+0.5、+1.0、+1.5と変換されるから。
(換算表は、とりあえずこちらを見ましょう)
つまり”できばえ評価”が3だったら、それは+1.5になる。このように各ジャッジの評価に変換を行った後、平均を出したものが、GOEとなる。
この要素の場合、1が7人、2が2人。上下切って、変換すると0.5が6人、1.0が1人。ここから二人除いて平均が0.6になるということは、ハイ、除かれたのはどっちが何人でしょう(笑)。当然1.0の人が除かれたら平均は0.5になるはずなので、この人は残っている。すると(0.5×4+1.0)÷5=0.6。ですね。

ちなみにこの変換、ジャンプも回転数に応じて(ジャンプの種類は問わない)変換のされ方が違う。
3回転はそのままなので簡単だけど、たとえば2回転だと、評価が3なら1.5に変換される。
ただ、アクセルジャンプは基本の回転数とは別で、ダブル・アクセルは評価3がそのまま3になり、3回転と同じ。
じゃあトリプル・アクセルはというと...3は3のまま。
あれ?
減点の方をみると、2回転の減点は-3が-1.0。ダブル・アクセルは-2.5。
3回転はそのままだから-3は-3.0。トリプル・アクセルは-4.2。
...あれ?
はい、ダブル・アクセルは”できばえ”が良いと、他の2回転より高く換算してもらえるけど、トリプル・アクセルは他の3回転と同じにしかならない。でも減点されるときは、他の3回転より大きく引かれることになりますね。
これは4回転でも同じで、プラスの評価はそのままなのに、マイナスは大きく変換されるようだ。しかもクワドラプル・アクセルは4回転と同じ変換(マイナスもだけど)。
大技がいかにハイリスク・ローリターンか判りますね。
現行ルールは「悪いこと言わないから、大技に挑戦するのはやめとけ!」とこんなにも主張しているのだ。
このルールの下で参戦した後で、抗議したって仕方なくないですか?プルシェンコさん。
スポーツ選手は、現行ルールに文句言っちゃいかんでしょう。不満なら出なきゃいいのでは。特にあなたのようなすでに栄冠を手にしている人は。早期改善を求む!という提言は大いによろしいと思いますが。

話がそれた。
コンビネーションジャンプの場合。
まず、基礎点は単純にふたつのジャンプの合計。
えっ、じゃあバラバラにふたつやった方が良くない?と思うのは早い。
まず、シニア女子の場合、SPで3+3または3+2は必須要素。
フリーは...ややこしいんだけど、ジャンプは7つまでで、うちひとつはアクセルを入れること、コンビネーション・シークエンスは3つまで、と決まっている。
さらに、同じ種類の3回転ジャンプを2回飛ぶときは、ひとつはコンビネーションかシークエンスにしないといけない(俗にザヤック・ルール)。
ジャンプの種類は5つ。つまり...7つのうちアクセルを除いた6つをすべて3回転単独にはできない。仮に5種類の3回転がすべて飛べる人だとして(少ない)あとひとつは2回転にしないといけなくなるので、それでは点が伸びないのだ。そしてもちろん、苦手なジャンプははずしたいし、得意なジャンプは多く飛んでGOE加点を稼ぎたい。となると、コンビネーションかシークエンスが必要。
逆に2回転までは何回飛んでも良いので、コンビネーションのセカンド・サードは全部2ループ、などでも大丈夫。

ちなみに、ダブル・アクセルは3回まで。
ダブル・アクセルの基礎点は3.5。これに加点が2.0もらえたとすると5.5になる。
これは、3フリップ(同じ回転数の中で2番目に基礎点が高い)の基礎点と同じ。
安藤選手が得意な3サルコウとなると、基礎点は4.50。
加点のつかないトリプル・サルコウより、質の良いダブル・アクセルの方が良いのだ。
さらにいえば、基礎点が一番高いのはルッツだけど、ジャンプの得手・不得手は個人差があり、一概にルッツが「一番難しい」とはいえないものらしい。
キム選手はルッツが得意だが、逆にループだかトウループだか、点の低いジャンプが苦手らしい。
彼女はダブル・アクセルも得意でだいたい3回入れてくる。得意なので加点もつく。
...いや、こういう配点を入念に研究して、対策をたてて練習してきた結果でしょう。そう思いましょうよ(誰に言ってんだろ)。

...で。次の浅田選手のプロトコルに移って。
7番目の要素「3F<2Lo+2Lo」は、3フリップ(ダウングレード)+2ループ+2ループの意味。
基礎点は、3フリップがダウングレードされているので2フリップ+2ループ+2ループで、後半のためそれぞれ1.1倍した基礎点を足して5.17。これにジャッジの減点が加わる。
昨シーズンまでは、回転不足がコールされたらジャッジは必ず減点しないといけなかったけど、今シーズンは緩和されたはず。つまり「私には回りきったように見えた」と思えば減点しなくて良い。これは、見る角度によって微妙なせいかと思われる。
ただしステップアウトやロング・エッジは今季も要減点のまま。
ロング・エッジの標記は、12位のカク・ミンジュンの2番目の要素「3F」についている「e」がそれ。これは要減点。微妙な場合はアテンションといって10位のレオノワの3番目、3Lzの後の「!」。これは各ジャッジが自分の見た目に従って減点したりしなかったりして良い。ここでは全員がっつり引いてるので、実質的に「e」がついたのと変わらない。

浅田選手のプロトコルでひとつ目につくのは、2番目の要素「3A+2T」。
これはトリプル・アクセル+ダブル・トウループのコンビネーションのこと。
目に付くのは、できばえ評価。
+1の加点をくれたジャッジが3人いる中、-2をつけたジャッジが一人いる。
ここで”陰謀”好きの人は、このジャッジ、キム選手の「3Lz+3T」にたったひとり3点(加点として満点)をつけたジャッジと同一人物では?と思うだろう。
しかしそれは判らない。
各選手のプロトコルで、選手の名前の下にある枠内を良く見よう。
The Judges Panel の下に、カッコ書きで in random order とある。
これ、昨シーズンまでは、番号順、と書かれていた部分である。つまりジャッジナンバー1~9の順、ということ。
それが今季から、番号順ではなく”順不同”になり、しかも一人の採点が終わるたび、ジャッジの順番がシャッフルされるようになった。
このプロトコルが昨シーズンのものなら、キム選手に3点加点をつけたジャッジは4番、浅田選手に-2点をつけたジャッジは8番で別人だが、今季はシャッフルされているから判らないのだ。
どっちにしても、マイナスをつけたのがたった一人なので、これは最低点でカットされるからGOEに影響してないんだけど。

一人の選手への採点では、順番は変わらないので、キム選手に最初の要素で3点をつけたジャッジが6番、8番でも3点をつけたことが判る。すべてジャンプにたいする加点なので、この人はキム選手のジャンプを高く評価しているのだろう。
また7番のジャッジは5番、9番、12番の要素で3点をつけている。これはそれぞれ、スパイラル・シークエンス、ストレート・ライン・ステップ、チェンジ・フット・スピンで、このジャッジは当然、演技構成点のスケート技術も高く評価している。というか、演技構成点はすべて9点台。まあ、一般人の感覚で普通に考えたら、この人が韓国人ジャッジですかね(笑)。
浅田選手の方では、2番目の要素にただ一人マイナスをつけたジャッジは、最初のトリプル・アクセルには加点をつけている。減点はいないがゼロの人も二人いる中で。この人は多分、コンビネーションのセカンドにもってきたジャンプが回転不足だと判断したんだと思う。
他のジャッジを見ても、取り立てて浅田選手に低めの点数をつけているジャッジ(何かもかも低いとか)はいないような気がする。
不正があったと主張する人は、こういうところからじっくり犯人をあぶりだしてくださいね。

たとえば...ロシェット選手のフリー。
ステップアウト、何回かなかったっけ?(見直さないと自信ないけど)
ステップアウトがコールされると必ず減点しなければならないんだけど、全員が減点しているジャンプ要素は最初のトリプル・フリップだけ。
つまり...トリプル・ルッツとダブル・アクセルは、技術審判がステップアウトのコールをしなかったということだ...多分(一方で、飛距離が長いなど、できばえの良い面があれば、相殺して良いのだったかも)。
ここで、全体に”できばえ評価”の高めなジャッジをあげるとしたら4番だが、このジャッジは演技構成点で9点台をつけていない、どころか、8.75も8.50もない。
私も彼女の高得点には疑問を感じるが(ショートは良かった)、少なくともプロトコルを見る限り、ジャッジの買収レベルの不正があったとは言えないように思う(技術審判ならあり?国籍非公開だし?)。
もちろん、試合終了後プロトコルが公開されることは皆知っているので、買収があるとしても、アカラサマなことは避けるだろうけど。

ジャッジは試合のたびに変わる。たとえば女子なら女子でも、ショートとフリーは同じ構成ではない。
だから、キム選手の妖艶な振り付けが評価されて、ウィアー選手のはなぜ評価されないのか、と言っても仕方がない。別に気持ち悪いから(失礼)ではない。あれが大好きでシビれるという人もたくさんいる。
選手は、そんなこといちいち気にしていたら身がもたない。誰にも文句言わせない演技を目指して練習に励むのみだ。
でも...疑惑があれば、選手だって色眼鏡で見られてしまう。
メダルの色で、たとえばもらえる年金の額に大差がつくとか、そういう体制の国ならいざしらず、選手はそんな次元の話とは別のところにいるはず。それこそ相対評価の時代と違って、転べば絶対減点がつくのだし、絶対に転ぶなというのは無理な相談である。誰だって転びたくないのに、かなりの選手が転んでるんだから。そこに大金が絡んでるとなったら、とても平常心では滑れないだろう。
主観が入る採点競技で、全ての人を納得させるのは難しいが、不正疑惑が起きるような選手は当然世界トップレベルあり(地方の県大会で不正をする意味がない)、そこまで行くのに努力してないはずがない。
その努力に泥を塗らないよう、判りやすく恣意的でないルール・採点を、くれぐれも目指して欲しいと思う。
by telescopio | 2010-03-01 00:36 | 雑記