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下手の横好き語学学習日記


by telescopio

Leap of Faith

Leap of Faith_d0018759_2323355.jpgやっと読み終わった...というのが、実は正直な感想。
これ、いつ買ったんだっけ?今年、ドバイの空港で買ったのは確かだけど、よく覚えていない...ま、いつでもいいんだけど、とにかく読み終えるのに時間がかかったのだ。面白いんだけど、難しくて。
このところ読んだ何冊かは、そもそも英語ネイティヴでない人が書いたものだったり、フランス語からの翻訳だったりしたので、そう難しくなかったんだけど、いやはや、さすがにネイティヴが書くと違うものだ。
Had it been for...とか始まる文(そして文末に”?”がない)を見て「if のない仮定法ってやつね」と判るまで、どのくらいかかったか。私の英語力ってこの程度ですわ。
国際政治に関わるコトバも難しいし、偽造パスポートは正しくは forged passport なのね、fake じゃなくて、とか、話す分には意味が通じてるけど、ちゃんとした言い方はそうじゃないのよ、みたいなのがいっぱい出てきて、電子辞書ナシには読めず、家にいるときしか読めなかったのと、何度か仕事の忙しい時期があって中断した(そうすると登場人物が誰が誰だか判らなくなる)のとで、途中挫折しかけたけど、やはり内容が興味深かったので、なんとか読み終えた。
終わり方そのものも感動的だけど、なんちゅーか、達成感アリ(笑)。

『QUEEN NOOR Memoris of an Unexpected Life』
99年に亡くなったヨルダンのフセイン前国王の4人目にして最後の妻、ヌール王妃の自伝。
この人の人生の非凡さは、何といっても、結婚前は普通のアメリカ人だった、というところだろう。



彼女は父方がアラブ系であったので、漠然と中東に感心があり、イランで働いたこともあったし、そのときイスラム教徒の信仰の深さに感心したりもしたけれど、まさかアラブの国の国王と結婚するなんてことは、想像もしていなかった(当たり前だ)。
パンナムのCEOで、ヨルダン航空のアドバイザーのような立場にもあった父親からフセイン国王に紹介されたのがきっかけで、次第に国王と親しくなっていき、結婚にいたる。結婚に際し、自発的にイスラムに改宗し、以後ヌール(アラビア語で光の意味)王妃と名乗ることになる(結婚前の名前はリサ・ハラビー)。
彼女は4人目の妻であるが、フセイン国王は同時に複数の妻を持ったことはなく(ヨルダンでは4人まで妻帯可能)最初の二人とは離婚しているが、3人目のアリア王妃はヘリコプターの事故で亡くなっている(この人の名前が、今のアンマンの空港”クイーン・アリア空港”に残っている)。なので、話の筋から外れるけど、3人目の王妃の小さな遺児たちが、ヌール王妃を「新しいお母さんだよ」と紹介された後、「この人が長生きしますように」と祈る場面は涙をさそうし、2人目の妻の子がヌール王妃に「もしあなたが死んだら、アレクサおばさん(ヌール王妃の姉)がお母さんになってくれる?」と聞く場面なども痛々しい。
そして、新婚旅行先のスコットランドで、暖房器具の不具合から死にかけたなんてエピソードも出てくるし、辛い流産の体験、尽きないゴシップにウンザリした話などもあるけれど、大半はフセイン国王が身を粉にして奔走した中東和平への道のりについて語られている。
エジプトのムバラク大統領の心変わり、「このままでは戦争になる。今君は世界中を敵に回している」と王が説得しても「その通り。アッラーのみが私の味方だ」と言い切るイラクのフセイン大統領、あくまで戦争を避けようとするフセイン国王に「イラクの味方、臆病者」のレッテルを貼り、メッカ巡礼さえ禁ずるサウジ国王、国連が決めたイラクへの経済制裁の結果、最大の貿易相手国を失い、疲弊するヨルダン経済...湾岸戦争前夜から続いた、果てしない緊張の日々が語られ、それは難しいんだけど、アメリカで教育を受けた女性が、ヨルダン王妃となった目で見たアメリカのずるさなんか、この人でなければ書けないし、こんな立場の人は他にいないのだから、これは偉大な仕事だなぁ、と思わされる内容が続く。
最後は、病に倒れた国王の看病をしてすごした、濃密な時間に触れ、苦楽をともにした夫への非常に静かで深い愛情と、ゆるぎない信仰が伝わり、じんとくる。
本文の最後は、中東和平につくした国王の遺志を継ぐ形でー
”いつか子ども達が、平和なエルサレムを歩く日が来ることを祈る、インシャー・アッラー”
そしてエピローグの最後は、夫への手紙のような形で
”旅の終わりに私達が再会し、もう一度一緒に笑うとき、私はあなたに話すことが、きっとたくさんあるでしょう”

最初の方には、国内情勢が怪しくなり始めた頃のイランから、ヨルダンを訪問したファラ王妃が「もし私たちに何かあったら、子ども達をお願いできますか?」なんて思いつめた質問が出たり、
テヘランで働いていた頃(都市計画関係の仕事だったらしい)ファラメイン女史に会った話などもあり、ああ、あの時代の人なんだなぁ、と最近読んだ本とのつながりに感じ入ったり。
しつこいながら、英語を読みなれてないとちょっと(私にはちょっと以上に)難しいけど、いろんな意味で勉強になるし、読み応え十分。がんばって読んでみてください。
by telescopio | 2008-11-27 01:04 | 読書(洋書)