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下手の横好き語学学習日記


by telescopio

誰も寝てはならぬ

いや~、きれいでしたね、荒川選手!演技も本人も、光り輝いていました。
どれかメダルは取れるだろうと期待してたけど、あんなに堂々たる金メダルとは!まさに女王、気品と貫禄にあふれ、日本人もここまでやれるようになったかと思うと、感慨深いものが...。
伊藤みどりが世界のみどりだった頃も、確かに誇らしかったけど、なんちゅーか、その。
ジャンプの高さとダイナミックさは、今当時のビデオを見ても、彼女を超える選手は出てないと思うけど、全体として「美しい」というのとは、ちょっと違った気が。
あの頃はコスチュームもイマイチ垢抜けてなかったし...今の中国のペアとか見てても思うけど、コスチュームのセンスってバカにならないよね(失礼)。

でも、今回しみじみ思ったけど、音楽もやっぱり大事ですね~。
荒川選手のフリーの曲「トゥーランドット」、オペラのいくつかの場面からの変奏曲だったけど、最後がアリア「誰も寝てはならぬ」で、最高の演出だったと思う。彼女自身、あの曲が大好きだというし、世界選手権で勝ったときの曲でもあるそうだけど、イタリアでのオリンピックに、あれ以上はないのでは。
「誰も寝てはならぬ」の最後は、競技会だから歌は入ってないけど、本来のアリアの歌詞は「ヴィンチェロ~、ヴィンチェロ~、ヴィンチェ~ロ~~~」という繰り返しで、これは英語で言えば「I will win」、私は勝つ!とい意味。
普通のイタリア人なら、プッチーニの有名なアリアは知ってるのが当たり前なので、荒川選手が足を高く上げたポジションできれいにスピンを回ってフィニッシュに向かっていたとき、イタリアの観客は、音楽に合わせて頭の中で「私は勝つ」という歌詞を聴いていただろう。そして素晴らしい笑顔でフィニッシュ。そりゃ皆立ち上がっちゃうよね。いや~、ほんと良かった。
私は知らなかったんだけど、「誰も寝てはならぬ」、開会式でパバロッティが歌ったそうで(現役時代、リサイタルの十八番でしたね)、オリンピックの開会式にオペラ歌手って妙な気もするけど、歌詞がスポーツの祭典にぴったりだし、盛り上がっていいのかも。
小泉総理も「私もあのオペラ好きなんですよ」と電話で荒川選手に言ってたけど、へ~、総理オペラなんか見るのか、とまた別の発見も。




プッチーニのオペラ「トゥーランドット」は、アリアの「誰も寝てはならぬ」だけが飛び抜けて有名な感じで、全体のストーリーは知らないって人もけっこういるよね。
私はクラシック音楽が特に好きってこともないし、詳しくもなんともないんだけど、イタリアオペラは割と好きで、プッチーニの「トゥーランドット」と「トスカ」はビデオも持っている。
「トスカ」はいいとして、「トゥーランドット」の方は、ストーリーは割とメチャクチャ。むやみやたらとドラマチックで大げさなところが、ちょっと宝塚っぽい(笑)。
昔、中国にトゥーランドットという大変美しいお姫様がいて、各国の王子が続々と求婚してくるんだけど、氷のような心をもった姫は、求婚者に難しい質問を3問出し、全てに答えられたら結婚に応じるが、答えられなければ首をはねる、と恐ろしいおふれを出す。果敢に挑戦する男は後をたたないのだが、質問があまりに難しいので、次々と若い命を散らしていく...というのが物語の始まり。
この話、プッチーニが全部考えたわけではなく、一応原作にあたる話はあるらしいんだけど、日本人としては、そもそも”トゥーランドット”なんて名前の中国人がいるか!と、まず突っ込みたくなるよね(笑)。
漢民族以外の王朝なのかもしれないけど、舞台は北京なので、そうなると北方系異民族か?
どうでもいいことと思いつつ歴史をたどると、中国で北京に首都を置いたのは宋代の金、元、明、清。
明以外は満州族とモンゴルの王朝で、そっち系の人名って全然判らないんだけど、それなら”トゥーランドット”もありうるのかな。
で、話を戻して、そういう状況の北京の町で、国を追われて離れ離れ流浪していたどこかの王と王子が、苦労の末偶然再開し、喜びの涙にくれていた。しかしその再開の直後、トゥーランドットの恐ろしいおふれを耳にした正義感あふれる王子が「なんてひどい姫だ!許しておけない!」と何故か突然いきり立ち、王宮に向かうのだけど、質問に答えられなかった男に、無慈悲に死刑を命じる姫を一目見るなり、今度はいきなり一目惚れ(笑)。
苦労の末にやっと会えたのに、父を置いて無駄死にすると言うのか、と泣いてすがる老王を振り切り、挑戦の意思表示にドラを3回叩く王子。
こいつバカか、と誰もが思う(笑)。そりゃ国を追われて当然だ。
そして、プッチーニにしたら東洋の神秘だったのかもしれないけど、泣いてすがる老王と王子を慕う女奴隷、女はいくらでもいる、バカなことはやめとけ、と茶々を入れる3人の大臣、私の運命は、ここに彼女とともにあるのだ!と譲らない王子のかけあいで、むやみやたらと盛り上がっていくアリアの最後に、ぐわ~~~ん!とドラを叩かれると、日本人としては、やっぱり笑わずにいられない。
そして王子は難問を見事とき(これがまたヘンテコリンな質問で...)姫と結婚しようとするのだが、姫がどうしても承知しない。
そこで王子は「よろしい、では私からも問題を。私の名前を明日の夜明けまでにあててください。それができたら、私は身を引きますが、当てられなかったときは、結婚してもらいます」と言う。
そこで北京の町中に「この男の名前を探り出せ!」とお触れが出され、昼間王子と話しているところを見た、という通報(?)を元に、老王と女奴隷が召し出され、名前を白状しろと脅されるんだけど、女奴隷は老王をかばい「この人は何も知らない。彼の名を知るのは私1人」と言って愛する王子の望みをかなえようと自殺。
ショックを受けた王子は、トゥーランドットに「あなたはこんなことをして、なんとも思わないのか」とか詰めより(言いがかりのような気もするが)、無理矢理チューしてしまう。
すると、あらら、どうしたことでしょう。氷のようだった姫の心が氷解し、いきなり王子を好きに...(笑)。
でも「もう恥ずかしくて人前に出られない」という彼女の涙を見た王子は「あなたの心の氷が溶けただけでいい。私の名はカラフ」と名を告げ、身を引こうとする。
そのとき、姫が「皆のもの、この男の名前が判った!」と高らかに宣言し、臣下を招集。
臣下が集まったところで、誇らしげに姫は告げる。
「この者の名は、愛!」
オイ!!
臣下一同「そうか、愛か!おめでとうございます、姫!」
めでたし、めでたし。
...という、荒唐無稽なお話でした。いやはや(^_^;)。
総理、こういうのがお好きでしたか(笑)。

元々イタリアでは、荒川選手の評判が高く、トリノに集う美女!みたいな新聞記事でも紹介されていたよね。
なんと言ってもソフィア・ローレンが典型的な美女というお国柄、イタリア人は意思の強そうな女性が好きらしく、日本女性の中は、ゴクミが大変人気があったりする。
荒川選手は、きりっとした大人の表情とつやっぽさ、加えてオリエンタルな雰囲気もあるから、言われてみれば、イタリア人に受けるタイプなのかも。
でもでも、今回の演技は美貌やスタイルの良さで得をした、というようなことではなく、確かな技術と素晴らしい表現力、そして集中力の結果でしょう。
荒川選手、ほんとに素晴らしかった!おめでとう!!!
by telescopio | 2006-02-25 00:48 | 雑記