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下手の横好き語学学習日記


by telescopio

銭湯へ行こう

銭湯へ行こう_d0018759_1893730.jpgイスラム世界への旅のお楽しみ、ハマム(というのはトルコ語。アラビア語ではハンマーム)について書かれた本のご紹介。
まず面白いのは、この本『銭湯へ行こう・イスラム編』は、出版社がTOTO出版(笑)。
この会社、トイレやお風呂関係の本をけっこう出していて、そのこだわりが、頼もしい(それが全てではなく、建築関係はかなり充実してますが)。
内容は、地域別のハマム事情、建築史や都市計画から見たハマム、ハマムと文学等、いくつかの視点から、専門家が分野を分担して書いた、表紙の雰囲気に反して比較的カタめの(というか、真面目な)本。
この分野の手頃な本としては、他に山川出版の世界史リブレットに『浴場から見たイスラーム文化』というのがあるが、このシリーズ全体に値段(765円)の割に薄っぺらいのと、個人的に、山川出版というと高校の世界史の教科書みたいで(大好きな科目ではあったけど)趣味の読書としては、TOTOの方をおすすめしておきます。

読んでまず「ほほう」と思うのは、『コーラン』に「浴場」という言葉は現れず、ムハンマドはハマムに行ったことがない、ということ。
なぜなら、ムハンマドの時代、彼の暮らした地方には、ハマムというものは存在しなかったから。
となれば、よく、イスラムでは「清潔は信仰の半分」と言われ、入浴はムスリムにとって半ば義務であり、そういう宗教的背景が、ハマムを盛んにした...というようなことを言う人がいるけど、それは必ずしも真実ではないわけだ。




「清潔は信仰の半分」と言われるのは本当だし、礼拝の前には身を清めることが義務付けられている(清めなしに行った礼拝は無効)が、それは別に入浴を意味せず、普通は手足や口などの清めでよく、いくつか「全身を清める=沐浴」の必要な場合も規定されているが、誰も公衆浴場に行けとは言っていない。
むしろ、ハマムに行くことの是非は、宗教的には議論を呼ぶものだったらしい。その理由のひとつに「同性愛の誘惑があるから」というのが挙げられているのは、ちょっと理解しかねるけど...。

ハマムの起源は明確ではないようだけど、古代ローマの浴場文化(さらに元をたどればギリシャまで遡る)が下敷きにあるのは確かだそうだ。
古代ローマの最大版図は、今のシリア・ヨルダンあたりとシナイ半島までを含んでいたから、シリアにはローマ浴場の伝統が残っていてもおかしくない(もちろん、ローマの影響の強かったチュニジア等北アフリカはいうまでもない)。そしてそういう地域がイスラム化されたとき、ムスリムは清潔を保つ必要と、ときに全身の沐浴が必要になるが、常夏のアラビアと違って寒い冬のある地域のこと、水風呂に入れとは言えなかっただろう。
であれば、ハマムを知らなかった時代と違い、そこへ行くことの是非が議論されたのは、これ以降のことになるのかな。
うーん、面白い。

その他、イランのハマム(ギャルマーベというらしい)は浴槽があり、それが逆に管理を怠ると不衛生の原因となったとか、ヨルダンにはハマムの伝統がなく、シリア人が大挙してアンマンにやってきた(それは出稼ぎだろうか?中東三国の中では、シリアは抜きん出て貧しいから)以降、アンマンにいくつかのハマムができたとか、いろいろ面白い話がある。
私自身が行ったことのあるハマムの中では、私はダマスカスのものが一番好きで、良きイスラムの伝統を感じたけれど、そこには古代ローマやギリシャの伝統も生きていた、と考えるのは楽しい。
そういえば、脱衣所兼休憩所のサロンには大きなドームがかかっていたけど、ドームというのも、元はローマだったっけ...。

銭湯へ行こう_d0018759_188301.jpgおまけは、札幌にもあった”猫カフェ”の2匹の猫。
上は活発なメグちゃん。
マスターが大好きで、マスターが外で雪割なんかしてると(注:積もって固まった雪は、どんどん割り崩して空気を入れないと、いつまでも溶けません)玄関のドアの前に座って、ずっとニャーニャー鳴いている。可愛い。
銭湯へ行こう_d0018759_1863812.jpg下は、どっしりと腰の思いグレちゃん。
無防備に、あお向けでお昼ね中。
去勢したせいで、非情におっとりした性格になったそう。食べて寝てばかりいるので、1歳なのにかなりの巨体。運動させようと猫ジャラシを振り回してもほぼ無反応で、遠くからメグちゃんが飛び掛るばかり(笑)。
マスターは一計を案じ、ドライのキャットフードをパーッと床を滑らせるように撒くことで、なんとかグレちゃんを走らせているが...。
「食い意地張ってるんで、エサにだけは走っていきますね」
なんだかイタイお言葉でした(^_^;)
by telescopio | 2006-03-12 19:22 | 読書