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下手の横好き語学学習日記


by telescopio

ほっこりしたいときに

本題と無関係な前フリ(?)ですが、出張に行ってきました。
6月のソウル、7月のシンガポール・バンコクと続き、けっこう疲れたというか、外国にいるのに時間(と食べ物)が自由にならないヘビの生殺しにウンザリし、帰ってきてすぐ、上司に「当面出張は遠慮します。近くならいいですけど。恵庭とか」と言ったのは覚えているけど、それが叶ったというか、今回の行先は倶知安(笑)。
えーと、道外の方のために補足すると、倶知安は”クッチャン”と読んで、スキーで有名な町らしいです。ニセコの近くなのかな?よく判ってませんが。それから、恵庭は札幌と千歳の間にある市です。
倶知安は、札幌からJRを乗り継いでもバスを利用しても、だいたい2時間かかるので、恵庭よりは遠いけれども、とりあえずは、願えば叶う素晴らしい人生だ!と思っておこう。
おっと、私は札幌の会社に勤めているので、倶知安は日帰り出張でした。

ほっこりしたいときに_d0018759_2239598.jpgさて本題。新潮文庫の8月の新刊で『フィンガーボウルの話のつづき』
なんとも不思議な味わいの、連作短編...という言い方でいいのだろうか。
全体としては話は続いているというか、つながりがあるんだけど、中には全然関係ないようなもの(判らなくもないが)もあるし、長さもバラバラだし、登場人物も、何回も出てくる人もいれば、一回きりの人もいて、映画でいうと『タンポポ』...は、例えに無理がありすぎるか。
内容はどうということもないけど、全体にちょっとコジャレた読後感があり、高くて美味しいコーヒーを出す喫茶店とかで、ゆっくり読みたいような感じ。
それにしても、なにやら覚えがあるような味わい...と思ったら、あ、あの人だ。



今回、この本いわゆる”ジャケ買い”をして、奥付も何も見てなかったんだけど、作者の他の著作を見て思い出した。
ほっこりしたいときに_d0018759_22542480.jpg2年前に文庫になった『つむじ風食堂の夜』
あれと作者が同じなんだ。なるほど~。
あまり印象に残る名前じゃなかったんで、気づかなかった(失礼)。
こちらはもっとはっきりした連作短編で、主人公も語り手も一貫しているし、ベースの物語がちゃんと進行していく。
内容も叙情的でハートフル。秋の夜に読みたい感じだった。
だいぶ昔の原田宗典の短編『優しくって少しばか』、あれをもう少しヒューマン系というか、ファンタジーよりにしたような。
それに比べると、フィンガーボウルの方は、ある意味もっと洗練され、都会的になった印象。でも独特のあたたかさは変らないと思う。
ただ、少々不思議な部分もあるので、嫌いな人もいるかもしれない。
江國香織の小説で、明らかにおかしな事態に主人公が驚きもせず、”あえて”淡々と話が進むのが逆にわざとらしく思えてハナにつくとか(ごめんなさい、私です)、村上春樹の小説で、SFでもないのに猫がしゃべるのがどうしてもイヤだとか、羊男ってなんだ、やみくろってなんだ、ワケわかんねぇもの出すなよ、とか、よしもとばななの小説で、うわぁ、ばななさん、結局そっち系にいっちゃうの?とか(笑)、好きな人にとっては、そこがいいんじゃない!と思えても、イヤな人にはイヤってこと、よくあるので。万人ウケをねらって小さくまとまるより、いいと思いますが。
というわけで、私は好きです。フィンガーボウルの話のつづき。
中でも...「私は殺し屋ではない」という短編。
いや、これは笑った。
喫茶店だったので、アカラサマに笑うこともできず、こらえて窒息するかと思った。
それも爆笑という感じではなく、なんというのかなぁ、ちょっとした、おかしみ、なんだけど。

この作者、クラフト・エヴィング商會の名でも本を出していて(そちらは奥様とのユニット)、そちらの本もハイセンスで好きです。
その話は、また今度。
by telescopio | 2007-09-10 23:27 | 読書